事例5 同性婚・夫婦別姓支援信託
同性婚や夫婦別姓を選択した場合の相続に関する支援信託活用事例を解説します。
Aさん(43歳)は、前夫との子B(16歳)がいるが、現在同性のパートナーのCさん(40歳)とAさん所有の自宅で同居している。
Cさんは、両親はすでに亡く、身寄りは姉妹のD(37歳)だけである。
家族信託以外の方法として、Aさん、Cさんが互いに遺言書でそれぞれに遺産を遺贈できるが、遺留分減殺請求権を持つBさんと、Cさんとの間で相続争いが起こる可能性が否定できない。
家族信託を利用して解決へ
Aさんを委託者兼当初受益者、Cさんを受託者、Aさん所有の自宅を信託財産とし、Aさんが亡くなったあとの対応として、受益権を収益受益権と元本受益権に分け、二次受益者として、収益受益権をBさん、元本受益権をCさんとする。その後Cさんが亡くなったあとの対応として、収益受益権については、三次受益者をBさんとする家族信託契約を締結する。
Aさん所有の不動産と預貯金とした信託契約を締結します。
信託契約を結ぶことにより、Aさんが認知症になっても、Aさんの希望通りリフォーム等財産管理および処分をCさんができることになります。
Aさんが亡くなったときは、次の受益者をBとし、Bの生活の安定や療養介護を行います。信託は、Bさんの死亡をもって終了とし、不動産の帰属先を長男Cとします。
家族信託の効果
Aさん所有の自宅の受益権を、居住する権利や他人に賃貸する権利である収益受益権と物件を保有する権利である元本受益権に分離することによって、Cさんが亡くなるまでは、Cさんの居住権を確保することができる。
Bさんは、元本受益権を得るので、Cさんに自宅不動産を取られたという気持ちにならずに済む。
Cさん死亡後は、収益受益権がBさんに移動するので、Bさんが受益権すべてを取得するので、その後は、信託契約を終了して、Bさんの所有とする。
このことにより、Bさんは、財産管理の面で、AさんとCさんの同居、Aさん死亡後のCさんの居住も認めやすくなる。
*Cさんが契約通り財産管理等することを監督し、またアドバイスする信託監督人として、専門家を置くことを勧めます。